偶然ネットで見かけたのだが、
最近出てたヤツで(2016年3月)
未発表の2作が入っているというので買ってみた。
中島らもは大好きで
お亡くなりになられたときは
ずいぶんとショックだった。
読んで見ると、なるほど昔読んだことがある。
凄いオチがある話ではないのだが
凄く良い。
エッセイなどのイメージではくだらないことを
愉快に楽しく書く感じの人だが。
小説は美しい。
もちろん、くだらなくて面白いのは根底にあったりもするのだが。
はぐれ者の悲しさを書く時などはことさら美しい。
未発表の「美しい手」は震えるほどに美しい物語だった。
青春の一端を切り取っただけの話なのだが
読み終わったあとに部屋を飛び出し町をあてど無く彷徨ってしまうほど
美しく。
悶絶してしまった。
あぁ、もうズルイなぁ。
あとがき解説に松尾貴史が書いているのだが
中島らもその人そのものがなんだかとても良かったのだ。
そういうことだ。
売れっ子時代には相手の注文に応え何でも書いたそうだ。
自分の書きたいものではなく、相手の要望に応える物を書いた。
しかし、残っているものはどうしようもなく中島らもの作品として輝いている。
そんな人がもういないなんて。
なんともはや、もったいないねぇ。
しかし、本文中に出てくる豆知識的なこと
結構今でも人に言うときに使ったりしているので
あ、元ネタここだったのか!
驚いたりもした。
にっこり。
各話一行解説
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■美しい手
学生時代映画ばかり見ていた青年の見た白い美しい手。
■”青”を売るお店
文字通り青い物を売るお店、美しい話かと思いきや落語調で最後にキュッとつねられる。
■日の出通りの商店街 いきいきデー
いきいきデーは年に一度誰を殺しても良い楽しい祭りだ。
■クロウリング・キリング・スネイク
昔話に蛇神にみそめられ自らも蛇になってしまう女の話みたいなものがあるが、それの現代版。
■ココナッツ・クラッシュ
椰子の実を頭にのせたまま何十年も修行している僧がいる。
■琴中怪音
滅多に人前ですら弾かないという家宝の琵琶。その音色は名状しがたい美しさ。そこにひとつ謎が。
■邪眼
異国の迷信に惑わせられる外国人の男、はたしてその正体はどちらでもあった。
■EIGHT ARMS TO HOLD YOU
ジョンレノンの未発表曲を買わないかと迫られる落ち目のミュージシャン。
■コルトナの亡霊
観客が途中で全員帰ってしまう映画。つまらないのではなく怖くて。調べてゆくと、誰も最後まで見た者はいない。
■DECO-CHIN
自分の体に異物を埋め込んだりして人体の異形化を楽しむ若者らを横目に、人生に疲れた中年音楽雑誌編集者は衝撃的なバンドと出会う。彼らは本当のフリークスだった。
■ねたのよいー山口冨士夫さまへー
ほぼ自伝的な、らも自身が京都で、ヒッピーくずれとラリって、犬とケンカして、ライブハウスで村八分のボーカル山口冨士夫と会ったりする。
■寝ずの番
落語家の大師匠が死んで、弟子達が集まってお通夜をするが。そこは手練の噺家ども、故人の想い出話でパーティーだ。
■黄色いセロファン
小学生、ギョウ虫検査の黄色いセロファン、僕の好きなあの子もこれをお尻に貼るんやろか。なんて、ほほえましくも美しい。
■お父さんのバックドロップ
お父さんが悪役のプロレスラーの子供、その胸中やいかに。これは憶えていたけど、大人になって読むと感想が変わる。
■たばこぎらい
禁煙、嫌煙ブームが来た頃の落語用のお噺。
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こうして並べて見るとその設定だけでも読みたくなってしまいますね。
また数年後読んでみるのも良いかもしれぬ。
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笛ひとつ吹けば星ひとつ。 pic.twitter.com/zHB52EBsav— UTUMI Mario 内海まりお (@mariouji) 2016年6月12日
中島らも短篇小説コレクション: 美しい手 (ちくま文庫 な 48-2) @amazonより
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