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2014年10月28日火曜日

【サンプル】マホロミ・マホと三人の怪物【二章】



以下↓【サンプル】マホロミ・マホと三人の怪物【二章】

 ■新しい世界

 世界はとても広い。君が世界を知ったつもりでいても。それはまだまだぜんぜん足りていない。知らない事は山ほどあるし、知らない世界はとめどなく広がっている。
 世界を支配しようとする魔王とそれを阻止しようとする勇者の戦い。そんなものは漫画か映画かゲームの世界のファンタジーで幻想で実際には存在しないのだと、君は言うのかもしれない。
 だけど、世界は広い。
 それはあるのだ。
 そう!今まさに暗黒の強大な力によって人々を支配し、世界の全てをその手中に収めんと、謀略と殺戮の限りをつくした大魔王。そして愛と勇気と人を信じる心を胸に、勇者は立ち上がり。魔王との最終決戦に望まんと!

 そう!今、まさにッ!

 どーーん!

「むにゃ?」
「にゃにゃ?」
「ついたのかしら?」
「ついたのかにゃにゃ?」

 小さな女の子マホロミ・マホは寝ぼけているのか、ベットから投げ出されて目を覚ましたのに、この落ち着きよう。結構な度量の持ち主なのかもしれませんね。

「あ、そうだ!空を飛んでいたんだったにゃ!」

 猫のアングは慌ててきょろきょろとあたりを見回します。
 空に舞い上がっていたはずの家が止まっています。風のうなり声ももう聞こえません。

「どこかに、うまくついたようね」

 マホはそーっとドアを開けてみます。
 アングも後ろからそーっと外をのぞき見ます。


 外に出て見渡してみると、石作りのお城のようでした。
 大きな広間のようなところに二人はいたのでした。
 天井ををぶち破り、どすんとお城の中に鎮座する一軒家。なかなかに面白い風景です。

「どこなのかしら?」
「さぁ、わからないにゃ」

 パチパチパチパチ、ゆったりとした拍手をして黒い影が二人に近づいてきました。ゆらりと大きく威厳と尊厳のある姿をした魔王、でした。

「やぁ、魔法使いのお嬢さん!よくぞいらしてくださいました。あなた様が悪い勇者達を退治してくれましたので、我が国の者達は大喜びでございます。まことに、ありがとうございます」

 唐突な出来事にマホロミ・マホはなんのことかわかりません。目をぱちくりとさせながら、不思議そうに魔王にたずねました。

「いえ、あの私は魔法使いではありませんし、勇者を退治した憶えもありません。というか勇者を退治してはいけないのでは?」
「はっはっは、魔法使いのお嬢さん。勇者は良きもの、魔王は悪しきもの。そういったことを常識として鵜呑みにすることほど、恐ろしいことはございません。彼ら勇者の一行は旅の途中で化物達を倒すことで、様々な大きな力を得てしまった。そしてその力に酔い狂ってしまったのです。世界を全て自分たちのものとしてしまおうと」
「はぁ、そういうこともあるものなのですね」
「あるものなのです魔法使いのお嬢さん」
「いえ、そして私は魔法使いではありませんよ」
「はっはっは、何をおっしゃる。振り返ってその素敵な家の下をごらんなさい」

 なんのことかしら?と振り返りマホは家の下を見る。
 そこにはにょっきりと変な形の銀色の靴を履いた足が二本つきでていたのです。

「なんですか、これは?」
「勇者です」
「どうなっているのです?」
「あなたさまのおウチが、悪い勇者をぺしゃりと押し潰したのです。こんなことが出来るのは魔法使いに決まってます。それも偉大な魔法使いさまだ」
「いえいえいえ、違います。魔法使いじゃないです。というかアングどうしよう。私、人を殺してしまったのよ」

 猫のアングはとりあえず生きていたので一安心といったところで

「そうだにゃあ、でもただ落ちて来ただけだし、気にすることないと思うよ」
「でも、だってだって!」
「魔法使いのお嬢さん、そちらの黒猫の使い魔の言う通り。本当にどうしようもない悪党だったのです。気にする事はございません。そして私はその悪党に殺される寸前だった。あなた様は命の恩人です」
「そんな…」
「そんなもこんなもございません。ひいてはあなた様はこの国を救われたのです偉大なる救世主様なのです」

 魔王は大仰に両手を拡げ彼女の偉業を讃えたので、マホはちょっと照れくさくなって困ってしまった。

「あぁ、あと悪い勇者の仲間もいっしょに押しつぶしてくださいました。本当にありがとうございます」
「え?」

 見ると、家の四方にはそれぞれに二本の足がにょっきりと生えていたのでありました。
 
「ということは4人もいっきに殺してしまったのね…」
「そういうことだにゃあ」
 
 マホはもうとんでもないことになってしまったとガックリと。でも、落ち込んでいてもしかたがないわ、と。立ち上がりました。 
 魔王は少々お待ちを、と家に押しつぶされた足を、取り出した杖で。とん、たん、たーんとリズミカルに叩きました。するとどうでしょう勇者の足はその銀色の靴を残して、塵となって消えてしまいました。

「もう彼らの人間としてのその姿は、とうの昔になくなっていたのですよ。悲しい話です。あぁ、そうだそこに剣があるでしょう?聖剣エクスカリバーというものです。魔王の私には触ることが出来ないのですが、なにか不思議な力を持っているそうなので、とっておきなさい。きっとそれが役に立つときがくるでしょう」

 魔王は剣を指差します。そこにはキラキラと輝く宝石のような剣がありました。マホはそっと持ってみましたが、それはとても軽く女の子であれどうにか扱えそうな代物でした。いや、剣を使うだなんて、それはまた人を殺すことなのだ。そう思うと彼女は少し怖くなりました。この不思議な世界もなんだか怖いもののように思えてきました。

「そんなことより魔王さん。私とアングは、私の生まれた町に帰りたいのです。アサツユという国です。おじいさんとおばあさんが心配して、探しているはずなのですから」
「それは困りましたね。アサツユという国は聞いたことがない。ここはヒラギーノという国で、まわりの国からは遠く離れています。そこに行くまでは悪党共がわんさかうろついているので、とっつかまって、檻に入れられ、こき使われて、ついには食べられてしまうでしょう。どうです。おもてなしもしたい。アサユツには帰らないで、ここで静かに暮らしてみるのは?」

「いやです。いやです。帰りたい、帰りたいよぉ」

 マホロミ・マホはまだまだ小さな女の子、とても悲しくなってしまって、声を上げてわんわんと泣き出してしまいました。
 魔王も猫のアングも困ってしまってオロオロしました。

「あぁ、お嬢さん泣かないで。私の魔法で占ってあげましょう。だから泣かないで」

 魔王はそういうと目をつぶり美しい声で歌のような呪文を唱え始めました。

「あら・いや・うー」

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