『無人島に生きる十六人』
■面白かった!
とてもよく出来た話なので、
実話と思って読んでいたが、
実は小説なのでは?
…と思ったがやっぱり実話だそうな。
■中規模の漁船が難破し、無人島に漂流する話だ。
明治32年の話らしい。
昔といえば昔だが、
そう遠くもない昔だ。
■しかし船員たちは立派な船乗りで
お爺さんから若者まで揃っている。
なので、漂流記ものにありがちな
仲間とのイザコザや、飢えにや病気に苦しみ
辛い別れ、とかは無い。
皆、規律正しく生き延びるために地道な作業をコツコツとこなすのだ。
■そして冒頭は生き残ったその老人が
新人船乗りの若者にその無人島での漂流話をするところから始まる。
そう、つまり生きて帰ってこれているのだ。
なので安心して読める。
■だからと言って全てが順風満帆なわけでは、もちろんない。
台風で船が大破するまでに、多くの荷物を島に運び込むことができたのが良かった。
ある程度の食糧や道具が揃っていたのだ。
ベテラン船員たちはこういう時の生き残りの術を知っているし。
若者たちも彼らを信頼して黙々と労働をこなす。
■島には川がなく、海水を沸騰させて蒸留水を作る。
サバイバル技術でよくあるやつだ。
しかし、これが思った以上に水がちょっとしか取れない。
16人もいるしね!
井戸を掘る作業もやるのだが、汗だくで何個も深い穴を掘るものの、
しょっぱい水しか出てこない。
蒸留水は少しだけで全然足りないし、
火を燃やすための木材もこの島にはほとんど無い!
■しかし魚は釣れたし、
海亀は陸にいる時はひっくり返すだけで捕まえられるという容易さ。
しかもその海亀がとても美味かったらしいのだ。
■そんな無人島での生活がとてもリアルに描かれていて
なんとも魅力的なのだ。
雨が降った時の「これで水が飲める!」という喜びもすごく感じることができる。
鳥の卵を食べたら美味しくて
だけども食べ過ぎて便秘になって
食べれる野草を探して食べたら便秘は治ったり。
アザラシが島の端によく居るが
それを食べるのは切羽詰まった時にしようと決めてたら
船員の何人かはアザラシと仲良くなって友情が芽生えてたり。
■そんなことを言っていると、
のんびりしているように見えるが。
その島は船の通るルートではないし、
助けが来る可能性はかなり低い。
彼らはここで何年でも耐える構えだが、
それも希望があればこそ耐えられるのだ。
果たして、その運命や如何に!
■最後は読んでいてワッと喜んでしまいましたよ。
読み終わった後は日に焼けていそうでした。
良い体験をした。
この記事で知ったよ↓
2021/08/21
太平洋の無人島に漂着した16人の日本人が腹いっぱい堪能した「牛肉よりうまい動物」の名前 海水で煮た潮煮は最高だった #プレジデントオンライン
kindle版がめちゃ安かった。
↓青空文庫でも既にあるのね。
須川邦彦
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