自動

2025年11月9日日曜日

【漫画感想】ヴィンランド・サガ


■ヴァイキングが居た時代のヨーロッパ北欧地域。

戦争、略奪が当たり前の世界の中で、

たったひとり人の争いをなくそうと動く人間が主人公だ。

とは言っても世界の戦争をなくす、とかではなく。

せめて自分は人を殺さず、話し合いで解決出来ないかと奔走する。


■と言われてどうだろうか?

そんなお花畑みたいなこと言って

無理に決まってるだろ?

なんて思ってしまったのではなかろうか?


■などと言いつつも、そう思い始めたのは青年になってからで、

幼少期の主人公トルフィンは殺された父親のカタキを獲るため。

ヴァイキングの仲間になり、復讐を果たすために。

強くなるため、生き残るため、人々を殺しまくるのだ。

■それは別に当たり前のことで

世界がそうなっているのだから、

そうしなければ自分が殺されてしまう。


仕方のないことだ。


■しかし、その殺してきた人たちは夢の中に現れる。

起きている時も背後にベッタリとついてくる。

どんなに言い訳をしても罪悪感は拭えない。


■そうして彼は戦いに疲れ果て、

ついには戦争の無い世を目指すのだが。


そんなことを考えているのは

世界でたったひとり彼だけだ。


多数決で言えば、

人殺しはやって良いこととなる。

だってほとんど全ての人間が

戦って奪うことを認めているのだから。


■そんなわけは無い!

と現代に生きる私たちは思うだろうが。

そうか?現代でもみんな

「仕方ない」と人殺しを容認してるのではなかろうか?


■もちろん積極的な戦闘狂ってのも居る。

戦いそのものが大好きで。

それこそが人生の生き甲斐だ!

ってな人。

まぁ、いるはいるのだが、多分これは割合少ない。

一定数いるのだけれど、それほど多いわけでない。



■では、その他の人たちは戦争に反対か?

といえばそうではなく。

周りがそうやっているんだから、

戦って勝ち取るのは素晴らしいことではないか。

たまに家族や仲間が殺されるのは悲しいけれども、

仕方のないことではないか。


■延々と「仕方の無いことだ」と言う言い訳を

全ての人が言う。

世界の仕組みは自分たちには変えることはできないから。

人を殺すことも仕方の無いことなのだ。


■多くの人間が世間の空気に流されて

人殺しを容認している世界なのだ。

今も昔も。


俺の家族を殺す奴は、悪い奴だから殺しても良い。


そして向こうも同じことを思う。


私から奪おうとする奴は、悪い奴だから殺しても良い。


■たったひとりの主人公トルフィン、

戦争を無くして平和な世界を作ろうとする人物を描くために。

それ以外の人物、人殺しをさまざまな理由で容認する人たちを

大量に描いている作品なのだ。

その中に私もあなたもいる。


■今、日本では死刑が認められている。

そしてほとんどの人は死刑制度に反対していない。

つまり悪いやつは殺してもいい、

と思っているのだ。


そう、あなたも私も人殺しなのだ。


■読もう!ヴィンランド・サガ!

堂々の完結!


素敵ですわよ。

嫌なこと言ったけど、

とても爽やかで清々しいラストでしたよ。

あなたが本当に平和を望むのなら。

さぁ!


ヴィンランド・サガ 1話試し読み。

  


ヴィンランド・サガ(29)


ヴィンランド・サガ(1)



極楽京都日記: 【漫画感想】宝石の国 市川春子  

極楽京都日記: 【漫画感想】プリニウス  

極楽京都日記: 【漫画感想】ザ・キンクス 榎本俊二  

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。