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2023年2月5日日曜日

【小説感想】タタール人の砂漠


「タタール人の砂漠」読み終えた!


■凄い!


ドラマチックで無く、

かといって悲惨な人生でもない。

しかし平凡な人生でもない。


感動ではない何かがごっそりとある。


■ひとりの人生をまるごと味わった感じだ。

これは俺だ!と嘆くことも出来るし。

つまらない奴だ、

と切り捨てることも出来る。


■それがなぜだか面白いのです!

何か起こりそうで何も起こらなくて、

退屈なはずなのにそうではない。

なんとなく「ヨコハマ買い出し紀行」に近いかも知れません。


■全てのシーンが情緒的に

絵画的に幻想的に描かれて、

あぁ、ここは人生として素晴らしい瞬間なのかな

と思わせる美しさ。


■しかし、主人公はやってくると期待している

ドラマチックな冒険活劇の運命をただただ待つことにより

青春を浪費していくのだった。


■いや、特段彼が何もせずにボーッとしていたわけじゃなく。

一生懸命勉強して軍部のエリートコースに入ったのだが。

しかし、だからこそゆえ。

人生の分岐点での判断を誤る。


今までの道を捨てて新しい進路に向かうことに躊躇する。

せっかくのこれまでの経験があるのだから、

今、選択を変えるのは違う気がする。

そう思ってしまうのだ。

そうしてそれは多くの人がそうしてしまう出来事だ。


■いや、しかしたまたま彼がその運命に巡り合わなかっただけで。

同じ判断をして成功する人もいるだろう。


なので何が正しくて何が間違っているのかはわからない。


■それが人生だ、と言ってしまえばそれまでなのだが。


それでも人生は面白いと思ってしまう話なのかもしれない。


期待通りには行かないが。

それでも、なんとか。


いや、それこそが。


要領よくうまく人生を乗りこなしてやろうなんて

おこがましい話なのだ。


タタール人の砂漠 (岩波文庫) ブッツァーティ (著)






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