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2020年2月4日火曜日

【映画感想】テリー・ギリアムのドン・キホーテ


■とても良かった!
ドンキホーテは生きているんだよ!
こういう物語が描きたい?
こういう物語になりたい?
語り継がれる物語の主人公とはこういうことだ!
それは呪いで祝福なのだ。
現実を物語に!


■本当に世界は自分があると思うようになる。
現実世界なんてのは誰かが叶えた夢なのだ。

■新進気鋭の映像監督がスランプにおちいり。
スペインの田舎町でうだうだと悩んでいたところ。
自分が学生時代に作った映画と偶然出会う。

そしてさらにその撮影地はここからそう遠くないところだった。

■撮影現場を抜け出した彼は
あの頃の想い出を追いかける。


■彼が撮った映画は「ドンキホーテ」だった。
出演者も交渉して村の人に出てもらった。
彼らは今どうしているのか。

■全ては変わってしまっていた。
頑固オヤジだった酒場の店主は虚な目で
お前のせいでウチの娘は外に出て売女となった!
と、彼をなじる。
そうだあの主役の爺さんドンキホーテ役をやってくれた
靴職人の爺さんはどうなった?
酒場の親父は言う
狂っちまったよ。
…え?それはどういう?


■村の外れに見世物小屋があった。
ボロボロでみすぼらしい建物だ。
しかしその中に彼はいた
靴職人の爺さんはそこに
あの頃と同じ騎士の鎧兜を被り

「私はドンキホーテ!偉大なる勇者だ!」
そうグルグルとした目で言うのだ。

「おぉ!お前は我が従者サンチョではないか!」
映像監督の彼を見つけそう言うと
そのボロ屋を飛び出し冒険の旅に出かけるのだった!



■そんな感じで
ドンキホーテの物語をそのまま描くのではなく。
どんどんと夢と現実の区別がつかなくなるような
幻なのか妄想か。
物語なのかどうなのか。
全てが分からなくなるような不思議な話なんだけど。

頭のおかしい人間の戯言ではなく。
真っ直ぐに前に進んでゆく人物として
とても輝いて見えてしまって。
そのパワーに圧倒され。
現実の諦めの気持ちなどが流されてゆく。
妙な感動で泣いてしまうのでありますよ。


■なんてことだ。
そうなんですよ。
こうなのだ!

■創作の初期衝動を思い出す。
人生の目指した憧れを復活させる。

実際はそううまくいく物じゃないから
しょうがないよね、
なんて言葉をくつがえす!


■溢れ出る情熱がここにはありますよ。
うるせぇ、てめえら黙っときーや!
邪魔をするだけなら帰ってもらおう。

現実を生きる君には
まるで
彼が狂っているように見えるのだろうが。

違うよ。

■狂っているのは君たちなのだ。
自分の夢を自ら潰して
心が狂い現実でしか生きられなくなった。
君たちが狂っているのだ。
他人の夢をせせら笑うことで
なんとか正気を保っている狂人なのだ。


■なのでさらばだ!
私は冒険の続きがある!
姫が待っておるのだ!
ゆくぞ!従者サンチョよ!
果てなき冒険の旅路へと!





あぁ、ティムバートンの「ビッグ・フィッシュ」と根本で同じところですな。
嘘つきの言う本当のことの強さ。
このドンキホーテの方はティムバートンよりも野蛮ですけれども。
それはワイルドってところで。







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