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2020年1月25日土曜日

【小説感想】夜行 森見登美彦


■森見登美彦の愉快な腐れ大学生の方ではなく、
幻想と怪奇の妖しい美しさを醸し出す方の小説です。

■これが思った以上に怖い!
正体不明の影がずっと付き纏う。
そして嫌なのが、
全部が明らかにはならない、
ってところ。

■何か解決したように見えて
よくわからないまま
それはまぁそういものだ、と
とても異常な状態を
現実の真実のように言われて
大変に恐ろしい。

■夜の世界に光が差し込んで終わるのだが。
私の中にはまだ夜の影が残っているのだ。
オタスケ!

■大学時代の英会話教室で知り合った気の合う五人が
10年ぶりに再会する。
京都は鞍馬の火祭りに行こうではないか。
と、集まった。

10年前も彼らと火祭りに行ったのだった。
その時は六人だった。
長谷川さんはその夜に失踪したのだった。
そして今も消息は不明のまま。

■そんな仲間が10年ぶりに再会する。
鞍馬に近い貴船の宿で積もる話もあり盛り上がる。
私が、ここに来る前にとある画廊で見た
不思議な絵の話をすると。
皆、その絵に心当たりがあった。
それぞれはそれぞれに別の場所で
その絵を見たという。

尾道

奥飛騨

津軽

天竜峡

私以外の四人はそれぞれの場所で
その絵を見、
少し不可思議な体験をしたというのだ。

ひとりひとりその話を語り出す。

■そんな感じで4つの場所の
4つの短編があって
それはそれぞれ
独立した話なのだけど。
最後でそれらがキュッとまとまるわけなのですよね。

四人が語ったあと。
主人公の私の話が
鞍馬で始まって終わる。

■何やら怪しげなものを見たり
恐ろしい体験をしたりするのだけど。
単純に幽霊だとか化け物の話ではないのが
逆に怖いのだよねぇ。
そして怖いのだけど
美しいのだよ。
それだから困ってしまう。
取り込まれてしまいそうな美しさ。

■最後は夜の世界から一転
朝の日の光が降り注ぐ場面で
スッキリ爽やかに色々諸々が解決したかに見える。

■しかしそこにはやっぱり一筋の影が残っていて。
ふと思い出すとあれはいったい何だったのか。
彼はその後どうなったのか。
ほんの少し気になってしまう。

だけれども私たちはとても美しい出会いをしたのだ。

■なんて感じですよ。
怖い!
でも、美しい!
アレはいったいなんだったのか。
あの絵はいったいどこに繋がっていたのか。

ぐるぐる、
ぐるぐる、と。
宵闇に火の粉は舞い落ちる。



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