ツノゼミ、体長数ミリの小さなセミのような昆虫だが。
その種類が豊富で、
特徴的な頭部のツノの形状が
なんとも不思議な形で
多種多様なバリエーションがある。
そして、そのツノの存在意義が全くもって不明なのだ。
そんなツノゼミになっていた。
朝起きると私の体はツノゼミになっていたのだ。
全く全体意味がわからないが。
私は意外に落ち着いていた。
スポーツは嫌いで体を動かすのは億劫な性格の私だったが。
この体はどうだ!
なんとも快適だ。
想像した昆虫の動きよりも
体感的に素早い動きが可能なのだ。
なんと言えば良いのか
一流のスポーツ選手になった気分だ。
私はベットの上を軽やかに疾走した。
肉体的喜びがある。
躍動感とはこういうことか!
あっ!
勢い余って私の体はベットから飛びおちてしまった。
しまった!この小さな体では崖の上から飛び降りるような自殺行為!
なんてこったい!
…と思ったのつかの間。
私は直感的に体の動かし方を知っていた。
羽を広げろ!
翼を広げるのだ!
背中あたりにグイと力を込め
自転車を全速力で漕ぐように
身体中の筋肉を使って
ちからいっぱい翼を羽ばたかせる。
ふわり。
飛んだ!
飛んだ!?
すごい!
すごいぞ!
私は空を、
空を飛んでいるのだ!
素晴らしい。
とても素晴らしい気分だ!
部屋の中を飛んでいるだけなのに
こんなにも心地よいものなのか!
そうだ!
外に出よう。
しかし窓は閉まっている。
はてさてどうしたものか。
そんな時に窓がググッと開いた。
我が家の猫、ミケ様の朝帰りといったところだ。
ミケは私の姿を見て。
野生の目をギラつかせたが。
私は瞬間、素早くその窓の隙間から外の世界へと飛び出した。
あぁ、飛べ。
飛べ、
飛べ。
私の翼よ
空に舞いあがれ!
ぐんぐんと
ぐんぐんと私の体は天に向かって飛翔する。
飛んで火にいる夏の虫。
私は大きな火に向かって。
天空に輝く太陽に向かって羽を動かし続ける。
あぁ、暖かい。
あたたかい。
あたたかい。
まぶしい。
まぶしい。
明るい。
明るい。
それが、輝かしい。
その光で
その熱で、
その喜びで、
私の全ては満たされる。
私は溶ける
溶ける
溶けてゆく。
なんとも充実した心持ち。
体長数ミリのツノゼミは、
遥かな命。
私はそっと目をさます。
極楽京都日記: 【怖い絵】手異人
— UTUMI Mario 内海まりお (@mariouji) 2016年12月12日
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