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2020年8月16日日曜日

【小噺】木陰で休もう

「あっつ〜い!!!おい、あそこの木陰で休もう、死ぬ!」


鴨川をテクテク歩いていた我らは

今年猛暑に参りましたと白旗を上げ

河原の大きな木の下のベンチに腰を落とした。


「いや、もうなんやねん。台風は来るわ、地震は起きるは、火山は大爆破!そしてトドメの疫病や」

「あぁ、もうどうにでもなれだな」


「ほんまに。そんでこの猛暑やろ、フザてとんのか?」

「誰が?」


「神様やないかい」

「あぁ、神様はいつだってふざけとるな」


「ほんまにな!…しかし、なんやな。こんなに暑いのにコロナってやつはなんで元気やねん?人間の方が死にそうやっちゅーのに」

「あはは、ほんま君死にそうな顔しとるわ」


「なんやねんお前は。つーかコロナはそんな強いんかいな」

「いや、それほど強くはないはずだ」


「んじゃなんでやねん?」

「そこは俺らと一緒だよ」


「…?なにが?」

「木陰で休んでいるんだよ」


「はぁ?」

「ウイルスは人間の体内にいるわけだから、多少外が暑かろうと問題ないんだよ」


「いやでも人間に熱が出ることもあるやんか」

「それでもせいぜい40度までだろ?」


「あぁ、そっかー」

「そんで、そうなったら人間ちゃんと木陰というか、部屋に入って休んでくれるからな。ウイルスにとっちゃ人間は安心な部屋なんだよ」


「あぁ、そっかー…ってお前なんかウイルスの肩持つな、お前はウイルスの味方なんかいや?」

「…、いや味方というか俺がウイルスなんだよ」


「はぁ?…なに言うてんねん?」

「うーん、まぁ体は人間やねんけどな、今はウイルスの我々が脳を支配して乗っ取ってる、っつーことなんだよね」


「…はぁ?お前熱あるんちゃうか?」

「と言うか君、いくら外やから言うても三密は守らなあかんで」


「…?」

「こんな近くで大声で喋って、移ってしまうがな」


「…ん?…けほっ!」

「どや、なんか頭ボーッとして来たやろ?…それ熱中症と違うで」


「…いや、ちょ、ちょっと待てや!…あれ?」

「ふふふ、ええねんで。体は大丈夫や。基礎疾患とかなかったり老人じゃなければ大丈夫」


「…」

「我々は増えることが仕事や、こうやって人間に取り憑いてごそっと増える」


「…ふふっ」

「そしていっぱいになったら、外に飛び出して、また仲間を増やす。な、簡単やろ?」


「…よし」

「お、完了したか?」


「ん…まだ完全じゃないが、そのうち馴染むだろう」

「よっしゃ、そんじゃ飲みに行こか!」


「おぅ、そうだ。ビアガーデン。ビアガーデン行こ」

「そら、ええ考えや。行こ行こ」


『わははははははは!!』


とても愉快な昼下がり。



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