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2025年8月5日火曜日

【映画感想】映画国宝



■「国宝」すごく嫌な映画だった。

歌舞伎のシステムが人間の邪悪の塊で

とにかく人間が恐ろしい。


でも最後に舞台と人生が同じ場所に

渾然一体として辿り着くのは心地良い。


しかしそれさえも他人の人生を見せ物にして

娯楽として消費しているのだなぁ、

と感じられて嫌な気持ちになってしまう。


■しかし、なによりもっとも大切なのは

糖尿病に気をつけろ!

ということだ!


■いや、いろんな人が凄いとか

美しいとか言っているのは

わかるんですよ。

だけどもそれ以上に嫌な部分が嫌すぎて

吐きそうな気分でした。

多分、悲劇的な部分も他人事としてみれば

困難を乗り越えて芸の極みに辿り着けて良かったねぇ、

と思えるんでしょうが。


■その困難が全部、業界の闇じゃねーか!

ってところで自分も多少なりと

職人的なことをやっているから

思ってしまうのですよねぇ。


伝統芸能に新しい人が入ってこなくて困っているんですよ。


ってそらそうやろが!って話で。


■これ歌舞伎だけじゃなくて。

アニメ業界とか寿司職人とか相撲とか

スポーツ関係とかでも。


ウチはずっと伝統的にこういう感じでやっているで

外部の人間がやいやい言うなや!


みたいな構造的にダメな部分まで

伝統ということにして考えないようにしている。


■そして基本的に職人気質の人は

人に教えるのが極端に下手!

だからスパルタ教育みたいなものになってしまう。


野球とかもそうだったけど、

今はYouTubeとかで本当に教えるの上手い人が

分かりやすく教えていたりしますよね。

名選手は名コーチにあらず、

って感じで教えるの上手い人は有名選手ではないんですよね。


■いや、歌舞伎は小さい頃から修練を積まないと出来ない芸なんです。

って嘘じゃないですか。


だって、この映画では歌舞伎役者じゃない

普通の役者さんが歌舞伎役者として

ちゃんと歌舞伎を演じてられる。


■というか、あのお爺ちゃんの国宝歌舞伎役者の人

私、あぁこの人は本当の歌舞伎役者の人なんだな、

と思っていたら。

田中泯さんなのかーい!!!


なんやねんあの演技!

本物にしか見えんやろがい!


かっちょいーい!!


■そして若い二人の鬼気迫る美しさ!

少年時代の役の人も凄いよねー!!


そして足を無くしてからの演技と

そこで挟む、その演目!

マーベラス!


■そんな感じで歌舞伎を演じる才能のある人は

探せばこの世にいっぱいいるはずなんですけど。

業界自体がそれを入れないようにしている。

入っても主役は出来ない。

才能があってもダメ。

芸の良さなんて関係ない。


■そんなところに好き好んで入る人は

やりがい搾取に慣れている人で

差別に親しんでいる人だけ。


いや、本当に

差別を差別だと本気で気づかずに

これは伝統ですから?

と真顔で言っているのが怖すぎたんですよね。


映画は激しく美しいんですけどね。


■最後、主人公が老齢になって

栄誉も得た時のインタビューで


「いろいろな困難を乗り越えて今の私があるんです」

とは絶対に言わないのが良かったです。


あの困難は別に芸には全く必要ではないものだし。

むしろあれらがあったから彼が到達するのが遅れたし。

生涯に舞台に立てる回数も減ってしまったのだから。


■あと、職人とかクリエイターで成功した人は

この映画すごく褒める気がする。

それはまさに成功者バイアスなんですよね。


この映画の主人公の様になって

そのまま浮上してこなかった人を

努力が足りなかったからだ、

と切り捨ててしまう人なのです。


なので最悪な気分なんですよ。

あぁん、もう!


■あ、少女漫画的な残酷さなのかもですね。

コンビニとかで売ってる嫁いびり漫画とか

こんなん誰が読むんだ?と思っていましたが。

読む人いるから売ってるんだよなぁ。

悲惨な人の体験を安全なところから見て

同情して泣いてスッキリする。みたいなの。

私は苦手なので。




映画『国宝』公式サイト



国宝上青春篇 (朝日文庫)吉田 修一 (著) 



極楽京都日記: 【映画感想】名付けようのない踊り  

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